みなさんキャッチーですか。ぬんです。




この記事は、ボドゲ紹介 Advent Calender 2020 18日目の記事です。
企画はぐらちゃん!今年もお疲れ様だ!
今回で5年目の参加らしい。ウケる。


昨日の記事はおべべちゃんの「店員さんのオススメのゲーム教えてくださいよ」でした。
ボドゲカフェの店員さん目線でゲームを見ることってないから、すごく新鮮だったな。
「このあとめちゃくちゃハラダした」は流行語大賞いけるぞ。






さて。
我々人類が向き合わなければならない大きな問題として、「エネルギー問題」があります。
このブログそんな社会派な感じでしたっけ。

こういう円グラフ、高校入試の社会の試験で出されがち(懐かしい)


私が学生だった当時から、「再生可能エネルギーが増えてきとるんやで!割合がまだ低いけど徐々に増えてるやつがあったら、それが再生可能エネルギーや!」的な問題の解き方をしていたと記憶していますが、変わらずグイグイ増えてるみたいです。


あとはアレですね。
東日本大震災きっかけで原子力の割合が抑えられたことにより、化石燃料への依存度が再度増加してるの、今の入試にめっちゃ出てそうですね。知らんけど。

受験生の皆さんは、緑色のペンで線引いて赤下敷きで隠せるようにしといてください。





そろそろ本題に入らないといい加減ブラウザバックされそうだ。

今日ご紹介するのは、なんと今からちょうど40年前、1980年当時からエネルギー問題と真摯に向き合っていた、こんなボードゲームです。






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エネルギーポーカー/Energie Poker(1980)
ゲームデザイン:Jürgen Herz
出版:ASS Altenburger Spielkarten
2~4人・60分・10歳以上








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エネルギーポーカー!です!

1人1つの先進工業国を担当!
自国で消費するエネルギーの調達を行うことになるぞ!

10ラウンドの後、最も多くのお金を持っているプレイヤーが、自国をいい感じに導いたということで勝者となります。





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さて、各ラウンドの開始時には、エネルギーチップがボード中央にジャラっと登場。


これ、このラウンドでの世界全体のエネルギー供給量です。
チップの色はそのエネルギーが何由来かを表していて、茶色チップ=石油とか、青チップ=原子力とか、そんな雰囲気だ。






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例えば4人プレイの1ラウンド目は、

・石油(茶色)が13枚
・天然ガス(緑)が5枚
・原子力(青)が2枚
・石炭(黒)が7枚
・太陽光(黄色)が1枚

合計28枚といった内訳。枚数にかなりバラツキがあるわね。






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一方、先進工業国であるところの我々。
同じく4人プレイ時の1ラウンド目には、それぞれ「我が国にはチップ7枚分のエネルギーが必要だな…」と思ってます。
ということは、このラウンドでの世界全体のエネルギー需要量は、7枚✕4人でチップ28枚分







…ん?28枚


そう!


世界全体のエネルギー供給量と!需要量が!まったく!同じ!


そんなミラクルあるかよ偶然か!?(必然です)



これは1ラウンド目だけの特徴ではなく、ゲーム終了までの10ラウンドすべてに共通する特徴です。

どうですか皆さん。ちょっときな臭い感じがしてきません? 










ではでは、いよいよエネルギーを調達していきましょう。
プレイヤーは秘密裏に、どのエネルギーチップを何枚欲しいのかこっそりビッドします。



例えば、茶色チップが3枚、青チップが2枚、黒チップが2枚欲しいならば、

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こんな感じにビッド。てか何この衝立かっこよくない?








この際のポイントは2つ。



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ポイントその1は、エネルギーの種類ごとに、調達に際しての単価を決めることができること。
例えば、先程の茶色チップ3枚のところに2金をピッと差しておけば、「私は今回茶色チップ3枚を1枚2金で買いたいですよ~~」というアピールになります。




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反対にお金を差していないポケットに際しては、「青チップ2枚が無料で欲しいんですが…」というなかなか厚かましいアピールになります。単価を増やすメリットは後述。









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ポイントその2は、自分の需要量ピッタリのビッドをしなければならないこと。

1ラウンド目にはチップ7枚分のエネルギーが必要なわけですが、ちょうど7枚分しかビッドすることができないわけです。

余裕を持って買い付けて、余った分は取っておく…とか上手にやり繰りして欲しいところですが、どの国も宵越しのエネルギーは持たない主義のようです。そんなことある?










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ビッド終わった???みんなビッド終わった???じゃあ衝立オープン!!

石油→天然ガス→原子力→石炭→太陽光の順で、ビッドを元に誰がチップを獲得するかを確認していくぞ。







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例えば石油。各自のビッドは以下の通り。

Aさん:単価なしで5枚

Bさん:単価なしで4枚

Cさん:単価なしで2枚

Dさん:単価1金で4枚

総需要15枚に対して、石油チップは13枚しかありませんから、こういう時のために、チップを取っていく優先順位というものが決まっています。






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まずは、①単価が高い順ですね。
ビッド時に設定した単価の高い人から順に取っていきます。

今回は、「単価1金で4枚」をビッドしたDさんが、合計4金を払って4枚ゲットです。
残りの石油チップは9枚。





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次に②ビッドした枚数が多い順

Aさんが5枚でトップなので、5枚まるまるゲット。
残りの4枚を、Bさんがすべてかっさらっていくことになります。

結果、石油チップ2枚を無料で欲しい!と宣言していたCさんは、石油チップを1枚も獲得することができませんでした


以下③~⑤までタイブレーク的な処理があるのですが、ここでは割愛。






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そんなこんなを、5種類のエネルギーについて順に行っていきます。





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エネルギーの種類によっては、上述の石油チップのように不足してしまったり、反対に余ってしまったりするものもあるでしょうね。





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プレイヤーはプレイヤーで、需要通り7枚のチップを獲得することができた人もいれば、先程のCさんのような悲劇に見舞われて、5枚だったり6枚だったりしか獲得できなかった人もいるでしょう。





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この時点で、自分がこのラウンドに獲得することができたチップ1枚につき、1金を得ます
「エネルギーポーカー」は最も多くのお金を持っているプレイヤーが勝者となるゲームなので、これが主な得点源ということになりますな。




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その次が問題。
獲得したチップの枚数が需要量に届いていないプレイヤーは、需要をきっちり満たせるように、不足分をボード中央の余りチップから購入しなければなりません。1枚3金で。なんで???






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以上がラウンドの基本的な流れ。






さて、ここまで真面目に読んでくださった皆さんの中には、


「色々書いてるけどよ、やってること的には結局バッティングゲームじゃねえか!おーいみんな!そんなよく分かんないゲームほっといてハゲタカやろうぜ!」


と思われる方もいらっしゃるかも知れません。




待って!!!

もうちょっと待って!!!

もうちょっと喋らして!!!



だって、ただのバッティングゲームが40年の時を跨ぐかよ!


「エネルギーポーカー」を名作足らしめる4つのキャッチーポイント!ご紹介だ!








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キャッチーポイントその①!エネルギーの支配!

エネルギーチップの分配を終えるたびに、各種類のエネルギーを最も多く獲得した人は、そのエネルギーの支配者になれます。
あなたは石炭の支配者ね、あらあなたは原子力の支配者なのね、といった具合。



支配者になるとどんないいことがあるのか?
それを知るために、先程のこの説明を振り返ってみましょう。



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獲得したチップが需要量に届いていないプレイヤーは、需要を満たすように、ボード中央に余ったチップを購入しなければなりません。1枚3金で。なんで???



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そう!不足分のエネルギーを購入するときの1枚3金!
誰に払うってその種類のエネルギーの支配者に払うんですな!やべー!





ちくしょう石炭の支配者め!おいしい想いをしやがって!
次のラウンドでは石炭に強気にビッドして、俺が石炭の支配者の座を奪い取ってやるー!!

ってなるじゃないですか!なるじゃないですか!




それを許さないキャッチーポイントその②!エネルギーごとのビッド数上限!




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このゲーム、各エネルギーについて、「前ラウンドで自分が獲得したそのエネルギーの枚数+2枚」しかビッドできないんですよ。

前のラウンドで石油を5枚取ったプレイヤー!今回は石油に7枚までビッドOK!
前のラウンドで石油を1枚も取っていないプレイヤー!君はビッドできても2枚までね

このように、「この人はこのエネルギー担当」的な流れがざっくりとできていくわけだ。



たくさん枚数をビッドできる=バッティングを制しやすいということですから、支配はなかなか覆りません。
鬱屈した現状を打破して、他プレイヤーからエネルギーを奪い取りたければどうすればいい?



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ビッドの時に単価を上げて、シェアを少しずつ奪い取るんですよ。怖いゲームだ。




ところが単価を上げずとも勝負を仕掛けることができる方法がもう1つあるぞ!

キャッチーポイントその③!転換カード!




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ゲーム開始時、各プレイヤーは「エネルギー政策転換カード」を2枚受け取ります。
これを使用することで、エネルギー1種類について、1回だけ上述のビッド数上限を無視できるんですね。





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「石炭、ほぼ俺の独占状態だな…そんなに単価つけなくても今回も石炭の支配者間違いなしっしょ…」

とか思ってるやつの!鼻っ柱を!ポキっとね!使いどころ超大事!







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そんなこんなを経て!石炭の支配者としての地位を確固たるものにした私!だが!

いつまでも 続くと思うな その栄華(エネルギーポーカー川柳)







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キャッチーポイントその④!Time goes by!

このゲーム、実は1ラウンドで、「向こう5年分のエネルギーを買い付けている」という設定。
このゲームがリリースされた1980年に、1985年までのエネルギーを買い付けるのが1ラウンド目。





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9ラウンド目には、なんと今年2020年に、2025年までのエネルギーを買い付けることになるんですな。エモくない???






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そして、各年のエネルギーの需要と供給、つまりボード中央にジャラっと用意されるチップの内訳は、「Chair for Energy and Power Station Technology」(エッセン大学, ボーン教授, 1978年)というガチの学術的予測を元に作られています(こういうの大好きだ)。



どういうことか分かります???



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1980年には一番枚数が多かった石油の供給、ラウンドを経ると段々減ってくるのよ。
何故ならかつてはそう予測されていたから。



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1980年には一番枚数が少なかった太陽光の供給、ラウンドを経ると段々増えてくるのよ。
何故ならかつてはそう予測されていたから。







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そう!「エネルギーポーカー」はただのバッティングゲームではない!

先の供給量の変化を頭に入れながら、適切なタイミングで自身の重きを置くエネルギーを切り替えていく、経済ゲームなんですよ!!

かーっ!たまんねー!





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いやだって想像してみ???1ラウンド目のビッドどうするか、想像してみ???
形勢が固まってきたところを崩しに行く勝負どころのビッド、想像してみ???

お前にはできるか!?私にはできねえ!(ちゃんとやれ)






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もうバッチバチに睨み合ってくださいね!バッチバチに殴り合ってくださいね!
大好きなゲームなんだよ~~1980年にこれ作ってるのどんなセンスしてるんだっていつも思っているよ。
100回遊びましょう。






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え、欠点?欠点ですか?
なんか雑なイベントカードがごちゃごちゃあるのがクールじゃねぇなって感じ!
でも時代を感じてむしろ愛せる



Jürgen Herzさん。
デザイナーとしてBGGに登録されてる製作ゲームが「エネルギーポーカー」1本しかないJürgen Herzさん。

あなたの作ったゲーム、40年後までちゃんと届いてますよ。








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というわけで、「エネルギーポーカー」のご紹介でした!

まだまだ終わらないボドゲ紹介 Advent Calender 2020、明日の担当はかーんさんだー!
唸れメンダコ節!いっちょキャッチーによろしくお願いします!